「口の中に海パンを詰められ窒息死・・・。これで3件目だぞ。一体、犯人はどういうつもりなんだ?」
警視庁捜査一課の島泉陽太郎は、現場である太田プロの中であんぱんを食べながら呟いた。彼は刑事ドラマ好きで刑事になった口で、昼飯はあんぱんに牛乳、タバコは踊るの青島と同じアメスピと決め込んでいた。
「おまけにこの、現場にいつも落ちてる謎のメッセージカード。さっぱり意味わからん」
島泉が手にするカードには「ぱ」と書かれている。
1件目の殺人は「お」。2件目は「つ」だった。
殺人は、吉本・人力車・そして今回の太田プロと、芸能事務所の中で行われており、被害者はいずれも今世間を賑わしている芸人だった。
そこへ、華麗なハンドルさばきでカイエンGTSを転がす古田がやってきた。
「Mr, シマイズミィィィ~、何か気づいたことありま鮮花?」
「古田さん!もう無理です!今回ばかりは解決しそうにありません!」
「その手に持ってるカードはなんだい?」
「これは、いつも殺人現場に落ちてる犯人からのメッセージみたいです」
「1つの現場に1文字か。意味わかめぇぇぇ~。」
古田がカードを眺め考えている途中、島泉の携帯が鳴った。
「島泉さん!大変です!4件目の殺人が起こりました!」
「な、なんだと!?」
「現場は、渋谷のワハハ本舗です。そして、またカードが落ちてました!文字は”つ”です!」
電話を切ると、島泉は内容を古田に伝えた。
「狙われるのは、今話題の芸人ばかり。そして、現場に落ちてる謎のメッセージカード。・・・なるほど。そういうことだったのか。島泉くん、これから言う場所に向かってくれ!」
島泉と古田は、ホリプロの前で犯人が現れるのを待った。そして、数分後に海パンを穿いた男が現れ、事務所の中に入っていく様子だった。
「見つけたぞぉぉぉ!この露出狂がぁぁ!!」
カポエラのような足技で男を捉える古田。
「おっぱおっぱ、おぱぱぴ?(どうしてわかった?)」
「一発屋芸人であるお前は2発目を上げるべく、邪魔な芸人達を消していった。他の面白い芸人がみんないなくなれば、またテレビは自分を呼んでくれるだろう、と。その手に持っているカードを見せてみろ」
小島の手には「p」と書かれたカードが握られていた。
「ocean pacific peace。現場にそのメッセージを残すことで、「今のテレビ界にもっと一発屋芸人の居場所を作れ!」と言いたかったんだろう。だがな、そんなことしても何も変わらない。お前は、ただの人殺しの露出狂だ。」
「刑事さん・・・。お、俺が間違っていたよ。前は「そんなの関係ねぇ~!はい、オッパッピ~!」って言ってればみんな笑ってくれた。・・・でも、もうみんな笑ってくれないんだ!全力で”ラッサンウェイ”しても、”ずいずいずい~”しても、もう、誰も笑ってくれなくなった。・・・もう、誰も俺のギャグで笑ってくれないんだ・・・。」
「小島・・・。」
「わかった。俺たちがお前のラッサンウェイ(Last around way 最後の回り道)に付き合ってやる。」
「・・・たち?古田さん?何を言って・・・。」
「あの日のエンタのように、もう一度輝こうぜ!」
「刑事さん・・・。か、かたじけねえ!」
数分後、3人は西川貴教のような、体にガムテープを巻いた格好で渋谷ハチ公前にいた。
「古田さん・・・。いいんですか、こんな格好で?」
「そんなの関係ねぇ!そんなの関係ねえ!はい、オッパッピー!」
大勢の見物人からは、歓声(悲鳴)が沸き起こっていた。主に若い女子から。
「久しぶりだ。こんな大勢の前でネタやって、歓声が沸き起こるのは。これだから・・・、これだから”お笑い”ってヤツはやめらんねえよ!」
「テープが剥がれ落ちても大丈夫、大丈夫!大事なところがハイ、ズイズイズイ~!そこのスクランブル渡ってる人!右見て、左見て、僕を見て!」
ノってきた3人は、人の目など完全に忘れて渋谷の交差点で踊り狂った。
ほぼアウトな格好で、大勢の人前で恥ずかしい動きをすることで、3人はえも言われぬ快感に浸っていた。そこへ、通報を受けた同業者が駆けつけた。
「ちょっとそこの君たち。街を歩くときは、ちゃんと服着ないとダメだよ。」
「そんな、数年前の草薙じゃないんだから。ちゃんと隠れてるじゃないです・・・・、キャアァァ!!」
真夏の暑さで汗だくになったせいでテープが剥がれ落ち、3人は出すとこ出してたわわになっていた。
「署の方で詳しく話を聞こうか」
熱い欲望がトルネイドしすぎて、警察にお縄になった狂人達だった。